第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
「え!?」
完全に寝ている。
「ラビ!?」
私は慌てて駆け寄ろうとする。
その瞬間。
「ティファ、吸わないで!」
アレンが咄嗟に私の口元を覆った。
同時に、自分も袖で鼻を押さえる。
白い煙が、廊下へじわじわと広がっていく。
甘い。
頭の奥が、ぼんやり霞む。
アレンが眉を寄せた。
「この香り……どこかで……」
その瞬間だった。
しゅるっ!!
「っ!?」
突然、細い糸のようなものが足首へ絡み付く。
床。
壁。
天井。
そこから、一斉に巨大な花が開いた。
「食人花!?」
ぬらりと粘つく蔓。
鋭い牙のような花弁。
生臭い息。
「なんでこんな所に!?」
アレンが左手を掲げる。
白銀の光が迸った。
「イノセンス発動!!」
巨大化した左腕が、迫る食人花を正面から叩き潰す。
轟音。
潰れた花弁が床へ散る。
けれど、次から次へと蔓が伸び、壁際から新たな花が開いていく。
「キリがない……!」
私はレイピアを顕現させ、迫る蔓を斬り裂いた。
その横で。
ラビは。
「すぅ……」
普通に寝ていた。
しかも、妙に幸せそうな顔で。
「……ラビ!! 起きて!!」
肩を揺さぶる。
けれど、まるで反応がない。
アレンが食人花を薙ぎ払いながら叫んだ。
「ラビ!! 寝てる場合じゃありませんよ!!」
しかし。
「ティファ……」
寝言。
「それ……反則……ずりぃって……」
沈黙。
私は固まった。