第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
アレンも、食人花を殴り飛ばした姿勢のまま一瞬固まる。
ラビは眠ったまま、私のスカートの裾をぎゅっと掴んだ。
「行くなってぇ……」
完全に無防備だった。
一気に顔が熱くなる。
「ラ、ラビ!!」
アレンが、ものすごく複雑そうな顔をした。
「なんで寝てる時までそうなんですか、この人……!?」
私は答えられない。
ただ、スカートを掴んでいるラビの手をほどこうとして――その指先に思いのほか力が入っていることに気付いてしまう。
起きていないのに。
それでも、離さないみたいに。
胸の奥が、また変に騒いだ。
「ティファ!」
アレンの声ではっと顔を上げる。
食人花の蔓が、私の背後から迫っていた。
次の瞬間、アレンの左腕がそれを叩き潰す。
「今は照れてる場合じゃありません!」
「照れてないわ!」
反射的に言い返す。
けれど、声が少し裏返った。
アレンは一瞬だけこちらを見た。
その銀灰色の瞳が、ほんの僅かに揺れた気がした。
けれど次の瞬間には、もう戦闘の顔へ戻っている。
「ラビを起こせますか!?」
「やってるわ!」
私は再びラビの肩を強く揺さぶった。
「ラビ、起きて。お願い」
その声に、ラビの眉がぴくりと動く。
「……ん……」
「ラビ?」
「ティファ……」
寝ぼけた声。
「……もうちょい、近く……」
「起きなさい!!」
私はとうとう叫んだ。
その瞬間、ラビの瞳がぱちりと開く。