第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
重々しい鉄門を押し開けると、湿った冷気が肌へまとわりついた。
クロウリー城――。
中へ足を踏み入れた瞬間、空気がまるで別世界のものへ変わる。
薄暗い廊下。
赤黒い絨毯。
壁には悪趣味な肖像画が並び、燭台の火が不気味に揺れていた。
「……趣味悪ぃな」
ラビが辺りを見回しながらぼやく。
けれど、その右手は相変わらず鉄槌を握ったままだった。
私は小さく苦笑する。
「怖いの?」
「別に?」
即答。
でも、さっきから微妙に私との距離が近い。
アレンも周囲を警戒しながら眉を寄せた。
「吸血鬼と師匠……一体どういう関係なんでしょう」
「さぁな」
ラビが肩を竦める。
「でも、クロス元帥がわざわざオレ達に押し付けるような真似したってことは、ただの怪奇騒ぎじゃねぇんだろ」
私は静かに頷いた。
城へ足を踏み入れてから、喉の奥に宿る『ニルヴァーナ』の鼓動が強くなっている。
何かがいる。
しかも、一つじゃない。
その時だった。
ふわり、と甘い香りがした。
「……?」
私は眉を寄せる。
花のような、妙にうっとりする匂い。
次の瞬間、床の隙間から白い煙が立ち上った。
「っ!?」
ラビが最初に煙を吸い込んだ。
「あれ、なんか……」
ふらりと身体が揺れる。
「ラビ!?」
次の瞬間。
どさっ、と音を立てて、ラビがその場へ倒れ込んだ。