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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第15章 【第十四話】言いかけた熱 


やがてラビは、自分の肩掛け鞄を背負い直すと、私の足元に置かれていた手提げ鞄を当然みたいに持ち上げた。

「ほら、帰るぞ」

「あ、鞄……」

「片手じゃ持ちづらいだろ」

さらりと言って、ラビは二つの鞄をまとめて左手へ持ち替える。

そのまま自然な足取りで歩き出した。

病院の重い扉を出る頃には、彼の歩幅はもう無意識みたいに私へ合わせられていた。

その慣れた気遣いに触れた瞬間、胸の奥が妙に落ち着かなくなる。

外へ出ると、昨夜までの冷たい雨が嘘みたいに空は晴れ渡っていた。

水気を含んだ石畳が、朝日に淡く光を返している。

教団本部行きの汽車までは、まだ少し時間があった。

「……なんだか賑やかね」

駅前通りを見渡しながら、小さく呟く。

広場には色とりどりの布が張られ、屋台が並んでいた。

焼き菓子の甘い匂い。

陽気な楽器の音。

行き交う子供たちの笑い声。

どうやら、この地方の収穫祭らしい。

通りの頭上には、小さなランタンが無数に吊るされている。

まだ火は灯っていない。

けれど、陽光を受けて揺れる色硝子が綺麗だった。

少しだけ瞳を細める。

昨夜までいた、あの暗い廃遊園地とはまるで別世界だった。

人が笑っている。

音が、ちゃんと響いている。

その当たり前の光景に、胸の奥の強張りが少しだけ解けていく。

その時だった。

遠くから、大きな歓声が上がる。

「始まったぞー!」

「パレードだ!」

次の瞬間、鮮やかな衣装を纏った楽器隊と踊り子たちの列が、広場の奥から一気に流れ込んできた。

翻る旗。

舞い散る花弁。

押し寄せる人波。

「っ――」

咄嗟に避けようとした瞬間、右腕を庇ったせいで身体がよろめく。

人の流れに押され、このままでは巻き込まれる――

そう身を強張らせた次の瞬間だった。

ぐい、と腰を強く引き寄せられる。
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