第14章 【第十三話】夜明けまで、この手を
「……」
数秒、思考が止まった。
昨夜の記憶が、少しずつ戻ってくる。
怖かったこと。
ラビが傍へいてくれたこと。
彼の声を聞いて、安心して眠ってしまったこと。
私は小さく瞬きをした。
ずっと、このままだったのだろうか。
胸の奥が、じんわりと熱を持つ。
その時。
「……ん」
ラビが微かに眉を寄せた。
起こさないように、そっと手を離そうとする。
けれど。
きゅ、と。
眠ったまま、ラビの指先へ力が入った。
逃がさないように。
私は思わず息を呑んだ。
その瞬間だった。
こんこん、と軽いノック音が響く。
「失礼しま――」
扉が開いた。
朝食の乗ったワゴンを押した看護師が、ぴたりと足を止める。
静かな病室。
ベッド。
繋いだままの手。
そして、ベッドのすぐ傍で眠り込んでいるラビ。
看護師が、ゆっくり瞬きをした。
私は固まった。
数秒後、看護師は声を潜めるようにしながら、ワゴンを静かに壁際へ寄せた。
「……仲がよろしいことで」
「ち、違っ――」
反射的に否定しかけた、その時。
「うるせぇ……」
掠れた声が落ちた。
ラビだった。
まだ半分眠ったまま、眉を寄せている。
けれど、手だけは離れない。
看護師は小さく微笑むだけで、それ以上何も言わなかった。
私は一気に顔が熱くなるのを感じる。
「ラ、ラビ。起きて……!」
左手は掴まれたままで、反射的に右腕を持ち上げかける。
けれど、痛みが走り、思わず顔が歪んだ。