第12章 【第十一話】触れてはいけない距離
少しだけ困ったように、寂しそうに笑う。
「ティファ、ラビが近くにいる時だけ、少し苦しそうな顔をするから」
「……そう、見える?」
「はい」
アレンは視線を伏せ、皿の端へフォークを置く。
「昨日も、帰ってきた時からずっと、二人とも変でした」
胸が詰まった。
ラビのことを見ている時だけ、苦しそうな顔をする。
自分では気付いていなかった何かへ、触れられた気がした。
「ラビは……」
言い掛けて、口を閉じる。
彼が私へ何を隠しているのか、自分にも分からない。
曖昧なまま、誰かへ話していいことではない気がした。
「……私にも、よく分からないの」
それだけ答えると、アレンの瞳が僅かに揺れた。
けれど、彼はそれ以上問い詰めなかった。
「そうですか」
静かにそう言って、小さく微笑む。
「でも、ティファが苦しいなら、ちゃんと頼ってください」
「……ええ」
それだけ答えるのが精一杯だった。
昔と変わらないアレンの優しさが、今はかえって胸へ深く沈んでいった。