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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第12章 【第十一話】触れてはいけない距離


彼が一人で暗闇へ沈んでしまわないように。

ただ、それだけを願っていた。

けれど、それが彼にとってどれほどのものだったのかを、私は今になって初めて知る。

「……アレン」

名前を呼ぶと、アレンは少し嬉しそうに目を細める。

「だから、僕にとっては今でも同じなんです」

柔らかな声。

「ティファの隣にいると、安心します」

その時だった。

離れた席で、グラスのぶつかる乾いた音が響いた。

無意識に視線を向ける。

ラビだった。

周囲の女性団員へ、何事もなかったように笑い返している。

けれど、その翠の瞳だけが、こちらを見ていた。

私ではなく。

私へ向けられた、アレンの眼差しを。

目が合う。

ほんの一瞬、ラビの笑みが僅かに歪んだ。

けれど、次の瞬間には、もういつもの表情へ戻っている。

「あー、悪ぃ。飲み物取ってくるさ」

軽い声を残し、ラビはそのまま食堂の奥へ歩いていった。

私は小さく息を呑む。

胸の奥へ、また言葉にならないものが積もっていく。

「……ティファ」

アレンが、静かな声で私の名を呼んだ。

「え?」

顔を上げると、銀灰色の瞳がまっすぐこちらを見ている。

先ほどまでの柔らかな笑みは、少しだけ薄くなっていた。

「ラビと、何かあったんですか?」

胸が、小さく跳ねた。

私は視線を落とす。

「……どうして、そう思うの?」

「分かります」

アレンの返事は早かった。

けれど、その声音は責めるものではない。
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