第11章 【第十話】巻き戻らない時間
振り返ると、扉の向こうにコムイさんが立っていた。
その傍には、処置を終えたばかりのアレン。
そして、少し距離を置くようにして、ラビの姿もあった。
「ティファちゃん。リナリーの様子は?」
「まだ、眠ったままです。ブックマンが、今は休ませる方がいいと」
「そうか」
コムイさんは小さく頷いた。
その横で、アレンの視線が寝台の上のリナリーへ吸い寄せられる。
顔色はまだ白い。
左目を覆う包帯も、見ているだけで胸が痛むほど痛々しい。
それでも彼は、支えようとしたコムイさんの手をそっと離れると、ゆっくりと寝台の傍へ歩み寄った。
「……リナリー」
掠れた声が、静かな病室へ落ちた。
返事はない。
眠り続けるリナリーの指先が、白いシーツの上で微動だにしない。
アレンは、その傍らで立ち尽くした。
手を伸ばしかけて。
けれど、触れてしまうことすら躊躇うように、指が途中で止まる。
その背中は、先ほど私の手へ縋った時よりも、ずっと小さく見えた。
「……僕が……」
途切れた声が、僅かに震える。
それ以上は続かなかった。
けれど、何を言おうとしていたのかは、分かってしまう気がした。
彼はきっと、自分を責めている。
自分がもっと強ければ。
自分がもっと冷静であれば。
リナリーがここまで傷付かずに済んだのではないかと。
胸が、静かに締め付けられる。