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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第11章 【第十話】巻き戻らない時間


その時、壁際に立っていたラビが、小さく息を吐いた。

「……なぁ、アレン」

アレンが、ゆっくりと顔を上げる。

「少し、散歩でも行くさ?」

「……え?」

「このままずっとここで突っ立ってても、気ぃ滅入るだけだろ」

ラビは、いつものように軽い口調で続けた。

「外の空気でも吸えば、少しは頭も冷えるさ」

その声音に、からかうような響きはなかった。

無理に元気づけようとしているわけでもない。

ただ、眠るリナリーの前で動けなくなっているアレンを、この部屋から一度だけ連れ出そうとしている。

そう見えた。

アレンは、迷うようにリナリーへ視線を戻す。

「でも……リナリーが目を覚ました時に、僕がいなかったら……」

「大丈夫よ、アレン」

私は、静かに声を掛けた。

「リナリーの傍には、私がいるわ」

アレンの銀灰色の瞳が、私へ向く。

そこにはまだ迷いが残っていた。

けれど、やがて彼は、ほんの僅かに頷く。

「……お願いします」

「ええ。任せて」

ラビが扉へ手を掛けた。

「じゃ、行くさ。ほんのちょっとだけな」

アレンはもう一度だけ、眠るリナリーを振り返った。

それから、ラビの後へ続く。

扉が、静かに閉じられた。

二人の足音が、病院の廊下の向こうへ少しずつ遠ざかっていく。

そのあとに残ったのは。

眠り続けるリナリーの静かな呼吸と。

アレンがこの部屋へ置いていった、行き場のない痛みだけだった。
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