第10章 【第九話】空白の再会
任務を終え、本部へ戻るための汽車を待っていた時だった。
立ち寄った宿の一階には、古びた電話機が置かれていた。
私はその受話器へゴーレムを繋ぎ、教団本部へ任務終了の報告を入れていた。
「対象のAKUMAは破壊しました。周辺でのイノセンス反応も、現時点では確認されてません。明朝の汽車で本部へ戻ります」
『報告ありがとう、ティファちゃん。怪我はないかい?』
聞き慣れた柔らかな声。
けれど、いつもの軽さはどこか薄かった。
「負傷はありません。少し疲れは残っていますが、問題ない程度です」
『……君の“問題ない”は、あまり額面通りに受け取れないからなぁ』
困ったような声音に、私は小さく息を吐いた。
「本当に大丈夫です」
『そうか。それなら――』
そこで、不意に声が途切れた。
電話の向こうで、誰かが慌ただしく扉を開ける音がする。
紙が捲られる音。
押し殺したような声。
先ほどまでの空気が、一瞬で変わった。
胸の奥へ、嫌な冷たさが広がっていく。
「……コムイさん?」
返事は、すぐにはなかった。
「何が、あったんですか?」
『ティファちゃん……アレンくんとリナリーが、任務先で負傷した』
一瞬、返す言葉が見つからなかった。
胸の奥が、ひやりと冷える。