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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第9章 【第八話】記録者の選択


「……ラビ?」

思わず、一歩近付く。

けれど彼は、あまりにも自然な動きで、ほんの一歩だけ距離をずらした。

避けたと決めつけるには、あまりにもさりげない。

それでも。

昨日までなら、決して生まれなかった空白だった。

「肩の傷、まだ痛むの?」

「いやいや、もう全然平気さ。リナリーのコーヒー飲んだら一発で治った」

冗談めかした声音。

「それは治療ではないでしょ」

「気分の問題さ」

ラビは、にこりと笑った。

昨日と同じ口調。

昨日と同じ声。

なのに、ひどく遠い。

「……昨日、言っていたことだけれど」

思わず口にしかけた、その時。

「悪ぃ、ティファ」

ラビが、軽く手を上げた。

「これからじじいに呼ばれてんだ。急がねぇと、また説教が長引くからさ」

「……そう」

「じゃ、またな」

私の返事を待つこともなく。

ラビは、軽快な足取りで私の横を通り過ぎていった。

袖が触れそうになって。

触れなかった。

その背中は、雪原で私の隣に立ってくれた背中と同じはずなのに。

今は、ひどく遠く見えた。

食堂へ辿り着き、トレイを持って席へ着く。

隣には、リナリーが座っていた。

彼女は私の顔を見るなり、心配そうに眉を寄せる。

「ティファ、顔色が悪いわ」

温かなハーブティーのカップが、そっと私の前へ置かれた。

「……ラビと、何かあったの?」
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