第8章 【第七話】肩を並べる約束
「今回向かってもらうのは、北東部の山間にある村だ。数日前から、周辺でAKUMAによる被害が確認されている」
「AKUMA……」
前回の、名も付けようのない異変とは違う。
黒い霧に呑まれ、存在そのものが薄れていく村ではない。
敵は、AKUMA。
この世界でエクソシストが戦い続けてきた、明確な脅威。
コムイさんの指が、資料に記された地図の一点へ触れる。
「現地のファインダーから、レベル1と思われるAKUMAが複数確認されたとの報告が来ている。雪深い地域で避難も遅れているうえ、住民の中には、まだ村に取り残されている者もいるらしい」
雪に閉ざされた小さな村。
助けを待っている人々。
資料の上へ落とした指先が、僅かに冷えた。
今度こそ。
消えてしまう前に、間に合えるのかもしれない。
「私が向かいます」
答えると、コムイさんは小さく頷いた。
「うん。ただし、今回は君一人ではないよ」
その言葉とほぼ同時に、部屋の壁際から、聞き慣れた声が上がった。
「そーいうこと」
振り返る。
書棚の脇へ寄りかかっていたラビが、片手を上げて笑っていた。
赤い髪。
額のバンダナ。
右目を覆う眼帯。
口元に浮かぶのは、いつもの軽く人懐こい笑み。
けれど、その姿を見た瞬間、胸の奥が僅かに落ち着かなくなった。