第8章 【第七話】肩を並べる約束
「ティファちゃん。喉の調子はどうかな?」
デスクの向こうで、コムイさんが眼鏡の位置を整えながら尋ねた。
執務室には、相変わらず書類の山と、濃いコーヒーの匂いが満ちている。
けれど、今日のコムイさんの表情には、いつもの柔らかな軽さが少なかった。
「もう大丈夫です。発動にも問題はないと、医務室から許可をいただきました」
「そうか」
コムイさんは、すぐには頷かなかった。
眼鏡の奥の瞳が、静かに私を見る。
「無理をして、平気なふりをしているわけじゃないね?」
穏やかな声だった。
けれど、その問いがどこへ向けられているのかは、分かってしまう。
喉の傷だけではない。
消えてしまった村のことも。
アンナのことも。
任務から戻ったあと、私がどんな顔をしていたのかも。
きっと、コムイさんは知っている。
私は僅かに視線を伏せた。
それから、静かに頷く。
「はい。任務へ出られます」
コムイさんは、しばらく何も言わなかった。
やがて小さく息を吐くと、机の上へ一枚の資料を置く。
「では、次の任務について説明するよ」
私は姿勢を正した。