第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて
ぼそりと零れた声に、また笑みが零れそうになる。
その時、食堂の入口からリナリーがこちらへ駆け寄ってきた。
「 ティファ、おはよう!体調はどう?」
「おはよう、リナリー。昨日よりは大丈夫よ」
「本当?無理しちゃ駄目よ。兄さんも、今日は休養するようにって言っていたわ」
「ほら見ろ。室長命令だぞ」
ラビがすかさず口を挟む。
リナリーが不思議そうに彼を見る。
「ラビ、どうしてそんなに嬉しそうなの?」
「嬉しくねぇよ。話が早いと思っただけさ」
「……何かあったの?」
リナリーの視線が、私とラビの間を行き来する。
私は昨夜の鍛錬場を思い出し、言葉に詰まった。
隣でラビも、パンを口へ運びかけたまま固まる。
「……別に、何も」
「ちょっと見張りをしただけさ」
声が、同時に重なった。
リナリーが目を丸くする。
ジョニーとタップが、揃ってこちらを振り向いた。
「見張り?」
「何の?」
「いや、その……」
ラビが珍しく言葉に詰まる。
私は誤魔化すように、カップへ口をつけた。
温かな飲み物が、喉をゆっくりと通っていく。
その温度に、昨日まで張り詰めていた心が、ほんの僅かにほどけた。
アンナが失ったものは、戻っていない。
あの村で消えた人々の記録も、空白のままだ。
歪んだ歌を生んだ何者かの影も、まだ何一つ掴めていない。
それでも。
私一人で背負わなくていいと、言ってくれる人がいる。
記録するためだけではなく、私が倒れないように手を伸ばしてくれる人がいる。