第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて
「そりゃ念も押すだろ。目ぇ離した隙に鍛錬場行く奴なんだから」
私は僅かに視線を伏せる。
「昨日は、ごめんなさい」
「……だから、謝んなくていいって」
ラビの声が少し低くなる。
けれど、すぐにいつもの調子へ戻すように、彼は向かいの椅子を引いた。
「ま、今日は大人しく飯食って、部屋で寝てろ」
「一日中?」
「一日中」
「少しくらい、書庫へ行くのは?」
「却下」
「まだ何もしていないのに」
「何かする前に止めてんだよ」
即答され、思わず小さく笑ってしまう。
ラビはその笑みを見た瞬間、少しだけ目を細めた。
「……何さ」
「いいえ。随分、心配してくれているのね」
「は?」
ラビの動きが、僅かに止まる。
「別に心配じゃねぇさ」
「そうなの?」
「そうそう。オレはただ、また倒れられて面倒なことになるのを避けたいだけで――」
「ラビ、顔赤いわよ」
「赤くねぇ!」
少し大きくなった声に、近くの席から視線が集まる。
その中に、ジョニーとタップの姿があった。
「あれ?ラビ、朝からどうしたの?」
ジョニーが首を傾げる。
タップもパンを片手に、こちらを振り返った。
「なんか珍しく焦ってない?」
「焦ってねぇさ!」
「声がもう焦ってるよ」
ジョニーが笑う。
ラビは露骨に顔を顰め、トレーのパンへ手を伸ばした。
「ったく、朝からうるせぇなぁ……」
「あなたが大きな声を出すからでしょう?」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「私?」
「……そうだけど、そうやって素直に返されると困るんさ」