第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて
翌朝の食堂は、いつも通り賑やかだった。
焼きたてのパンの香りと、食器の触れ合う音。
科学班の人たちの慌ただしい声。
任務から帰った団員たちの低い笑い声。
私はトレーを手に、空いている席を探しながら歩いていた。
身体の疲れは、まだ残っている。
けれど、昨夜ラビに部屋まで送られ、半ば見張られるように休まされたおかげか、眩暈はもうなかった。
喉の痛みも、昨日よりは落ち着いている。
それでも。
ふとした拍子に、昨夜のことを思い出してしまう。
倒れかけた身体を支えた腕。
耳元で落ちた、掠れた声。
――見てる前で、いなくなりそうになるなよ。
胸の奥が、僅かに熱くなる。
あれは、どういう意味だったのだろう。
記録対象として、途中で失われるのが嫌だっただけなのか。
それとも。
「……おはよーさん」
聞き慣れた声が、頭上から落ちた。
顔を上げる。
ラビが、トレーを片手に立っていた。
いつもの笑顔。
いつもの軽い声音。
けれど、私と目が合った瞬間、彼の視線がほんの僅かに止まった。
喉元。
顔色。
立ち方。
呼吸。
ひとつずつ確かめるみたいに視線が動き、すぐに逸れる。
「……おはよう、ラビ」
「あー……ちゃんと寝た?」
「ええ。あなたが部屋の前で、休めと何度も念を押したから」