第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
「セトラの人が……死者を縛ったのですか?」
声が、自分でも分かるほど揺れた。
ブックマンは片目を伏せる。
「まだ、そうと決めつけるでない。だが、魂が還る流れを知る者でなければ、あれほど巧妙に流れを逆転させることはできんだろう」
魂を導く術を知る者。
それを、逆に使った者。
天へ還るはずの死者を、現世へ無理に縫い留めようとした者。
何のために。
誰を、そこまでして残したかったのか。
黒く焼けた村を見つめていると、胸の奥へ冷たい予感が沈んでいった。
「……記録は、わしが持ち帰る」
ブックマンが告げる。
「この事件を偶発的な異変として終わらせてはならん。何者かが、死者の魂を留める方法を試しておる。その目的が何であれ、次が起きる可能性は高い」
「次……」
ラビの腕の中で、アンナが眠ったまま小さく身じろぎをした。
ラビの表情が、僅かに険しくなる。
「また、こんな村が出るってことか」
「完成に至っておらぬ以上、試みは繰り返されるだろう」
ブックマンの言葉が、冷たい朝の空気へ沈む。
完成。
この村の死者たちは、誰かの目的のために縛りつけられた。
そして、生きていた人々まで、その失敗の余波へ呑まれた。
その事実に、胸が締め付けられる。
私は手を握り締めた。
歌っても、救えなかった命がある。
苦しみから解放できた魂がある一方で、既に痕跡ごと失われていた人たちがいる。