第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
“君にしか”。
その言葉が、団服の重みと一緒に胸へ落ちる。
これは訓練ではない。
初めて、黒の教団のエクソシストとして与えられる任務。
失敗すれば、誰かの命が失われるかもしれない場所へ、自分の意思で向かうのだ。
私は羊皮紙へ視線を落とした。
「……承知しました」
小さく息を吐く。
「現地を確認します。まだ救えるものが残っているなら、見過ごしたくありません」
コムイさんの目が、ほんの僅かに和らいだ。
けれど、その直後。
「気負うでないぞ」
部屋の隅から、低い声が落ちた。
振り向く。
書棚の影から、小柄な老人がゆっくり歩み出てくる。
皺の刻まれた顔。瞳へ宿る、静かで鋭い光。
記録者。
そして、私がセトラの血を継ぐ者であることを知る、数少ない人物。
ブックマンだった。
その少し後ろには、長い手足を持て余すように壁へ寄りかかっていたラビの姿もある。
赤い髪。眼帯。いつもと変わらない、人懐こい笑み。
けれど、ブックマンの背後に立つ彼の姿は、食堂や回廊で軽口を叩いていた時より、どこか輪郭が違って見えた。
「今回の任務には、ブックマンとラビも同行する」
コムイさんが説明する。
「現象の記録と分析が必要だからね。何が起きているのか分からない以上、現地で得られる情報は一つも失いたくない」