第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
私はブックマンへ向き直り、静かに一礼した。
「ブックマン様。ご一緒できて光栄です。ご指導、よろしくお願いいたします」
一瞬、ラビが目を丸くしたように見えた。
けれど、ブックマンは僅かに眉を寄せるだけだった。
「……固苦しい挨拶は要らん。わしは見たものを記す。それだけだ」
「それでも、師匠からお話は伺っています。多くの歴史を見届けてきた方だと」
「クロスの奴め。余計なことまで喋りおって」
ブックマンは小さく鼻を鳴らした。
けれど、その瞳は、私の喉元へ静かに向けられている。
「ティファ嬢」
「はい」
「お主の歌は、魂へ触れる力を持つ。だが、触れられるからといって、すべてを救えると思うでないぞ」
胸の奥が、僅かに強張った。
「……はい」
「還るべき魂を送り、囚われた魂を解き放つ。それでもなお、届かぬものはある。救えぬものまで背負えば、いずれ歌う者の方が崩れる」
不意に、師匠の声が記憶の底から蘇る。
――お前のその力は……いつか、お前自身まで食い潰すぞ。
似たような言葉。
けれど、ブックマンの声には、師匠の苛立ちとも警戒とも違う、古い痛みのような響きがあった。
私は唇を引き結び、もう一度頷いた。
「肝に銘じます」