第41章 【第三十六話】記録者の帰る場所
前方では、クロスが一歩、踏み込んでいる。
『断罪者(ジャッジメント)』から放たれた一撃が、正面からティキを貫いた。
轟音。
ティキの身体が大きく弾き飛ばされ、壁を突き破って、瓦礫の奥へ叩き込まれる。
明らかに、クロスが押していた。
あれほど誰の手にも負えなかった暴走を、たった一人で、制している。
「……終わりだな」
煙を吐き、クロスが歩を進めた、その時だった。
方舟の崩壊とは、違う。
もっと濃く、もっと粘りつくような圧が、一気に場を支配した。
場違いなほど軽い、笑い声が落ちた。
「おやおや」
崩壊する空間の奥から、巨大な影が、突如姿を現す。
千年伯爵。
その姿を認識した瞬間、空気の温度が、変わった。
クロスの動きが、ほんの僅かに、止まる。
「……これはまた」
千年伯爵は、崩れた瓦礫の中へ、ゆったりと歩み寄った。
倒れたティキを見下ろし、困ったように首を傾げる。
「困りましたねぇ。こんなに壊れてしまって」
壊れた玩具を拾い上げるように、ティキの身体を、軽々と肩へ担ぐ。
ティキは、反応しない。
完全に、意識を失っていた。