第41章 【第三十六話】記録者の帰る場所
逆さ吊りの視界の端に、師の肩へ担がれた銀色の髪が映る。
「……ティファ!?」
アレンの顔から、血の気が引いていく。
あの時、一人で残った姿。
崩れる通路の向こうで爆ぜた、あの光。
繋がってしまった瞬間、全身が冷たくなった。
「師匠……! ティファに、何が……!」
もがくように身を起こそうとして、けれど逆さ吊りの体は、宙で揺れるだけだった。
ラビの視界は、クロスを捉えていなかった。
その肩から力なく零れ落ちる、長い銀色の髪へ、目が吸い寄せられていた。
一瞬、それが何なのか、分からなかった。
見慣れたはずの色が、意味を結ばない。
理解を、脳が拒んだ。
なのに、頭が追いつくより先に、身体の芯が凍りついていた。
崩壊の轟音も、背後のティキの気配も、全身を支配していたはずの戦闘の緊張も、急に遠くなる。
クロスの肩に担がれたまま、ティファは微動だにしなかった。
垂れた腕も、閉じた瞼も、指先も、何ひとつ動かない。
団服は裂け、覗いた肌には無数の傷。
腕にも脚にも、乾いた血の跡が伝っている。
生きるか死ぬかで殺し合ったような、激しい戦いの痕。
――ヴェイン。
一人残して進むしかなかった、あの場所。
崩れる通路の向こうで爆ぜた、あの白銀の光。
止められなかった。
恐れていた最悪が、今、目の前にあった。