第41章 【第三十六話】記録者の帰る場所
『聖母ノ柩(グレイブ・オブ・マリア)』。
クロスが、もう一方の手に握った拳銃──『断罪者』の銃口を向ける。
放たれた一撃が、正面からティキを貫いた。
「――!?」
不意の一撃に、ティキの巨体が、大きくのけぞる。
アレンたちを瓦礫ごと呑み込もうとしていた触手が、その一撃で薙ぎ払われた。
そして。
崩れた床の縁で、支えを失ったアレンの体が、開いたばかりの穴へと滑り落ちた。
「アレン!?」
ラビが手を伸ばす。
届かない。
だが、クロスが銃口を下ろした。
その空いた手が、落ちていくアレンの足首を、無造作に掴んだ。
アレンの体が、逆さのまま、宙で止まる。
せり上がる柩の上に。
一人の男が、立っていた。
長い外套。
真紅の髪。
唇には、火のついた煙草。
クロスは、逆さ吊りにしたアレンを片手でぶら下げていた。
崩壊する方舟も。
目の前で暴走するノアも。
その男にとっては、面倒な仕事の一つに過ぎないようだった。
「……なんだ、この汚ぇガキは」
呆れたように、男が呟いた。
「少しは見れるようになったかと思ったが……いや、汚ねェ。拾った時と、全然変わらんな。馬鹿弟子」
「……師匠……!」
逆さ吊りのまま、アレンの声が震えた。
クロス・マリアン。
探し続けていた元帥が、ようやく姿を現した。
けれど、その声も、途中で止まった。