第41章 【第三十六話】記録者の帰る場所
「あの男を、殺したんじゃなかったんスか……? あいつらは、アニタ様や、マホジャ様や……オレの仲間を、いっぱい殺したんスけど……?」
その場の空気が、冷えた。
「助けるって……オレらの想いを、裏切るんスか?」
「チャオジー……」
リナリーが名を呼ぶ。
けれど、チャオジーの目はアレンから動かない。
「助けるんなら、アンタは敵だ」
ラビは、息を呑んだ。
止めなければならない。
そう思ったのに、声が出なかった。
チャオジーの怒りも、間違いではなかったからだ。
「奴らと同じ……悪魔だ!!」
その叫びが、崩れゆく塔へ響き渡った。
アレンは、何も言い返さなかった。
ただ、その言葉を受け止めるように、立ち尽くしている。
ラビは、歯を食いしばった。
チャオジーの怒りも、アレンの選択も、どちらも分かってしまう。
助けたいと願うことは、綺麗事じゃない。
失った者の前で、その言葉は、時に刃になる。
その時だった。
アレンの表情が、ふいに強張った。
「チャオジーッ!」
考えるより先に、地を蹴り、チャオジーを突き飛ばす。
次の瞬間、彼が立っていた場所を、黒い影が薙ぎ払った。
床が、無数の触手に貫かれ、砕け散る。
そのまま触手は、アレンの身体を搦め捕り、下層へと引きずり落とした。