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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第41章 【第三十六話】記録者の帰る場所



声が、震える。


「オレが、何者でも。記録者でも、ただの男でも。あいつは、オレの名前を呼ぶんさ」

「……それは、お前を縛るものだ」

「縛りじゃねぇ」

即座に返す。

「錨だよ」

水面のティファが、笑う。


『行ってらっしゃい』

あの声。

『帰ってきてね』


「あいつがいるから、オレは戻れる。どんな夢の底からでも。どんな戦場からでも」

ラビは、鉄槌を握り直す。


「記録するだけの存在なら、戻る場所なんていらねぇ。でも、オレには、ある」

もう一人の自分を、睨む。


「お前が言う“48番目までのオレ”には、なかったものさ」



沈黙。
水面が、静かに揺れる。


「……ブックマンの責任は、どうする」

もう一人のラビが、低く問う。


「歴史を記録する。心を移さず、ただ見届ける。それが、一族の役目だろ」

「ああ。だから、オレは記録する」

ラビは、頷いた。


「全部、覚えてるさ。見てきた死も、生きてきた奴らも。……あいつのことも」

口の端を、僅かに上げる。
いつもの、軽い笑み。


「記録と、覚えてることは、違うんだよ」


――記録することと、覚えていることは違うの?

ふいに、あの夜の声が蘇る。


書庫のランプの下で、まっすぐに問いかけてきた、ティファの声。

あの時、オレは答えを持ってなかった。
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