第41章 【第三十六話】記録者の帰る場所
「思ってたさ」
最初は、そうだった。
黒の教団に来た時も。
並ぶ棺を、百を超える死を、ただ“四十九番目のログ”として眺めていた。
ここも、いつもの戦場と同じだと。
記録して、終わらせて、次へ行くだけだと。
「なのに」
もう一人のラビの声が、低くなる。
「お前は、仮初の仲間のために、戦うことを選んだ。ブックマンの掟を曲げてまで」
水面の影が、揺れる。
団服の採寸。
騒ぐジョニー。
笑うリナリー。
呆れるリーバー。
誰もが、ブックマンとしてじゃなく、“ラビ”として接してきた。
仲間として。
当たり前みたいに。
「……それの、何が悪りぃんだよ」
ラビは、低く呟いた。
「あ?」
「失望してたさ。人間なんて、愚かだって。……でも」
水面に映る、最後の影。
銀色の髪。
「あいつらは、オレを“ラビ”として笑わせた」
胸の奥が、熱を持つ。
「記録しに来た“ブックマン”でも、よそ者でもなく。ただの、一人の仲間として」
もう一人の自分が、目を細める。
「それが、お前を弱くした」
「違ぇよ」
ラビは、まっすぐそいつを見据えた。
「強くしたんだ」
水面の影が、はっきりと形を結ぶ。
ティファ。
銀色の髪を揺らして、こちらを見ている。
「あいつは、言った。オレがブックマンの道を選んでも好きだって。その優しさごと、好きになったって」