第10章 Cries in vain★
華楠side
目が覚めるとそこはコンクリート打ちっぱなしの無機質な部屋。上半身を起こし周りを見るが、かろうじてベッドに寝かされてはいたことだけが救いの何も無い部屋。
しかしそのベッドが異様に大きく違和感を覚える。
「起きた?」
ウィン…と自動扉が開き現れたのは、くたびれた白衣に身を包んだ男
「……………」
…どうして此処に居るんだろう。
何が起きた?悟空が三蔵を呼びに行って、私は烏哭さんと話してて…そこからの記憶がない。…あれ?だとしたら烏哭さんはどこに…
考え事をしているとギシリと音がして男がベッドに乗り上げた。
そして顎を掴まれ顔を上に上げられる。
「ほんと。美人になったもんだ」
その声と言葉が森での会話とリンクする
「………………烏哭…さん…?」
「ピンポン♪」
よく見れば髪型と服装さえ違えどその顔は自分の知っている兄弟子的存在の彼だった。
「ここ…どこですか」
「ん〜言えないかなぁ」
言えない、ってことは烏哭さんは連れてこられた側じゃなくて私を連れてきた側ってことだ。
「目的は何ですか?」
「流石に聡いね。詳しいコトは言えないんだけど君に協力して欲しいことがあるんだよね〜」
協力して欲しいこと…
用があるのは私…
そして多分私が烏哭さんに協力することは三蔵達には不利益になること。じゃなければわざわざ引き離したりなんかしないはずだから。
烏哭さんの発する言葉ひとつひとつを手がかりに状況や意図を探る
「なんか一気に大人しくなっちゃったね。今まではあんなに話しかけてくれたのにな〜」
「…………………」
「ま、いいや。色々試させてね?
今はだんまりだけどちゃんと哭かせてアゲルからさ」
烏哭さんはナイフを取り出し自分の左手の甲をスッとなぞる。つーっと線が入りそこから血が滲み出てぷつぷつと玉を作り皮膚の上を滑り落ちた。
「烏哭さ…ん…何を…」
自傷する目の前の男に例えようのない恐怖を覚える。
「君を抱くとさ怪我が治るって聞いたんだけど」
知らない。
自分にそんな力があることなんて知らない。首を左右に振って意志を示す。