第10章 Cries in vain★
「くそっっ!」
悟浄が苛立ちから木を蹴る
「悟空」
三蔵の声に悟空の肩が震えた
「烏哭、と言ったな」
「う、うん。よく華楠の寺院に三蔵の師匠と一緒に来て手合わせしてもらったって…」
三蔵は悟空の話を聞きながら懐から煙草を取り出し火をつける
「あいつ、三蔵の事も知ってるって…華楠もあいつのこと兄ちゃんみたいな存在だって嬉しそうに言うから…だから…俺…」
手を強く握りしめ、やりきれない気持ちで悟空は華楠の笑顔を思い出す。
「昔…確かにその烏に一度だけ会ったことがある。胡散臭い野郎だ。その後も何かにつけわざとらしくその陰をチラつかせてきた。俺を挑発するようにな」
三蔵は木に凭れかかりながら深く煙草を吸い思い出すように煙を吐き出した
「天竺吠登城で、妖怪に混じり蘇生実験を担う化学者であり無天経文の継承者にして唯一額に印を持たない異端の最高僧が居る。それが烏哭三蔵法師。華楠を攫った張本人」
「三蔵…法師…!?」
「妖怪に加担している目的は定かではない。…ただひとつ確かな事…奴は敵だ」
現在牛魔王サイドにある経文は3つ。
牛魔王の元に烏哭がいる限り、揃った経文の力を発動させる事が可能となる。
烏哭の真の狙いが何であれ、経文も華楠も守り抜く事…そう思いながらここまで来た。
それなのに……
今すぐにでも助けに行きたい
じっとしていられない程の焦燥を三蔵は感じていた
「僕たちが旅をする上で一番危惧していた事は2つ。
1つは三蔵の魔天経文を奪われること。
もう1つは自分と相手の気を交わらせることで治癒力や生命力を増幅させる力を持つ華楠を奪われること。」
八戒が今の状況を悟空と悟浄に説明する。
こういう時何も言わなくても状況を整理して纏めてくれるのはありがたいなと思いながら三蔵はその様子を見る
「で、華楠が敵の手に渡ってしまったと」
悟浄もシュボッとタバコに火をつけた
「僕たちですら彼女の力の全貌は知りませんし、華楠も詳しく分かってないと思います。となるとあの手この手を使って試されるでしょうね」
「試されるって…?」