第10章 Cries in vain★
華楠の昔からの知り合いということ
三蔵とも面識があるということ
二人の師匠の知人ということ
それは悟空にとって、十分信頼に足り得るものだった。何の疑問も持たず、違和感も抱かず、悟空は「おう!分かった!」と元気よく返事をして華楠を烏哭の元に置いて三蔵を呼びに行くべく走り出す。
(華楠にとって兄ちゃんみたいな存在ってことは三蔵にとってもそんな感じなのかなー)
そんなことを考えながら森を駆け抜け、三蔵の元へとたどり着いた悟空。
「あ、さんぞ…」
名前を呼ぶや否や違和感に気付いた三蔵は、じろりと悟空に冷たい視線を送った
「華楠はどうした」
「それなんだけどさ、華楠の知り合いだってやつと偶々会って!三蔵のことも知ってるし久しぶりに会いたいから呼んできてって言われたんだ…けど…」
空気が重くなる
「どんな奴だ」
「えっ…と…全身真っ黒の法衣着てて…あ、華楠が烏哭さんって呼んでた!」
「………………チッ」
三蔵は吸っていたタバコを地面に落とし踏みつけ火を消すと悟空が来た方向へ走り出す。
それを見ていた八戒と悟浄も三蔵の後を追う。
「悟空、行きますよ。案内して下さい」
「え…?え???」
まだ状況を飲み込めてない悟空に八戒は走りながら説明する
「本当にその烏哭さんとやらが三蔵に会いたいのなら、悟空と華楠と一緒に自分から出向くはずです。それを悟空だけ、三蔵を呼びに行かせた。ということは」
「目的は華楠、ってコトだな」
「ーーーっ!俺…っっ!」
4人が華楠と烏哭が居た場所まで辿り着く
…がそこには誰もおらず、散らばった薪と、烏の黒い羽根が1本落ちていた。
少し離れた木の上でその様子を眺めている烏哭の腕には意識のない華楠
そんな彼女を抱き抱えたまま烏は闇に消えたのだった
「ちょっとお姫様借りてくよん♪」