第9章 十六夜★
「えっと、三蔵は…はい!」
「藤、か」
「三蔵の目の色と白の正装が、藤の花っぽいなって思って…あとね藤って上品とか神聖とかそういう印象も強いんだって。だから三蔵にピッタリかなーって思ったんだけど…どう?」
「フン…悪くないな」
上品、という単語に後ろでププッと笑う悟浄と悟空に三蔵は銃を向ける。
「なぁ華楠!これのどこが上品なんだよ!」
「もー。そうやってバカにするからだよ。悟浄、はい!」
手に押し付けるようにして渡すと、悟浄はゆっくり包み紙を開いた。
「悟浄はリコリスね。なんか触覚とかが…ぽいから」
「え!?そんだけ!?なんかもっとないの?猿とか生臭坊主にはもっとなんか色々言ってたじゃん!」
「え、だから触覚がぴょんぴょんしてるのが似てるなって」
「一旦触覚から離れてくんない?」
「で、八戒。八戒は描いてるの見てたから知ってると思うけど」
「まじで終わりかよ!」
「ありがとうございます。緑のアナベルですよね」
アナベルの花言葉は
ひたむきな愛、辛抱強い愛情
まさに八戒にピッタリだと思いながら描いた。敢えて本人には言わないけど、博識な八戒なら知っているだろう。
「華楠は自分のやつ何描いたんだ?」
ひょこっと悟空が顔を出す
「私も赤い花で考えたんだけど、そうすると悟浄と被っちゃうからさ。それだと面白くないなーって、結構悩んだんだよね。」
そう言いながら包みを広げたマグカップには紫、黄、赤、緑の薔薇が4輪描かれていた。
「ちょっと欲張っちゃった!」
それは言わずもがな、4人のイメージカラーで。
「で、なんでお前は薔薇なんだ?」
「え、ただ好きだからなだけだけど」
「薔薇は薔薇でもさしずめお前は月下香がお似合いだな」
紫煙を燻らせながら三蔵が言う。
「八戒、月下香ってどんな花?」
「月下香はチューべローズとも言いまして、夜に甘く芳醇な香りが強くなるため、官能的や危険な快楽との花言葉がありますね」
「っっ!!!」
「変態女にはピッタリじゃねえか」
真っ赤になる華楠とそれを見て口角を少し上げる三蔵
(あれ華楠で遊んでるよなぁ)
(八戒にとられた憂さ晴らししてやがる)
哀れそうに見つめる悟空と、察する悟浄は二人で乾いた笑いをするしかなかった。