第15章 体育祭
実況は完全に笑いを堪えきれない。
「これはもう“借り物競争・ユカリ無双編”です!!」
観客席も大爆笑。
「いや人気すぎるだろ!」
「これ本人が一番忙しいの草」
しかし1年生の席だけは、少し違っていた。
笑ってはいる。
だがその奥で、二人の視線だけはずっと同じ一点を追っている。
爆豪と轟。
(戻ってくるたびに距離がリセットされる)
(それでもまた近づく)
気づけば、競技の勝敗よりも。
別の“耐久戦”になっていた。
そして借り物競争は、完全にカオスの領域に突入していく。
「お題:憧れの先輩!」
「ユカリ先輩で!!」
切島が元気よく走り出し、普通に笑顔でユカリを連れていく。
「お題:今世は無理だけど来世で付き合いたい人!」
「いやもうそれ実質告白じゃん!」
上鳴がノリで叫びながらユカリの元へ突撃し、周囲が爆笑する。
「もうこれ競技じゃなくて公開処刑では?」
誰かが言った通りだった。
ユカリはもう半ば慣れた様子で苦笑している。
「はいはい、次行こっか」
もはや“借りられ役”として適応しているのが逆に怖い。
だが空気が一瞬変わる。
次の走者。
峰田実。
紙を見る。
「今一番デートしたい人」
「きたああああああああ!!」
叫びながら一直線。
向かう先は当然――ユカリ。
その瞬間だった。
「おい」
爆圧。
爆豪が動く。
「……え?」
轟焦凍も無言で前に出る。
空気が一気に凍る。
峰田が止まる。
「ちょ、ちょっと待てよ!競技だろ!?ルールだろ!?」
爆豪は一歩前に出る。
「ざけんなブッ殺す」
峰田、完全に硬直。
「いや殺意!!殺意!!」
轟は静かに言う。
「爆豪、殺意はだめだ。でも峰田は止める」
「どっちだよ!!」