第15章 体育祭
二人三脚の競技。
グラウンドは歓声と砂埃で揺れていた。
1年と3年のチームがほぼ同時にスタートし、まさに“デッドヒート”の様相を呈している。
タスキはいよいよアンカーへ。
3年生のアンカーはユカリと環。
対して1年生はまだタスキが渡っていない。
「行くよ環!」
「……ああ」
足元は完全に揃っている。
呼吸も、歩幅も、ほとんど一つの動きみたいに噛み合っていた。
観客席からもざわめきが起きる。
「え、あのペア普通に速くない?」
「連携えぐい」
だが、その瞬間だった。
コーナー手前。
ユカリの足がわずかに乱れる。
「っ……」
ほんの一瞬のバランスの崩れ。
その瞬間――
環の腕が即座に動いた。
「……っ」
ユカリの腰を支えるように引き寄せる。
ほとんど反射。
倒れる前に、支える。
「ありがとう環」
距離が一気に近くなる。
そのまま自然に、ユカリの体は環に軽く預ける形になる。
周囲の歓声が一瞬だけ大きくなる。
だが、二人はすぐに体勢を戻す。
「……行ける」
「うん、あと少し!」
再び動き出す二人三脚。
だがその“近さ”を、見てしまった者たちがいた。
1年生サイド。
爆豪が立ち上がる。
「……おい」
隣の轟焦凍も無言で視線を固定する。
空気が一気に張り詰める。
切島が慌てて両手を広げる。
「待て待て待て!競技中!今競技中だから!!」
上鳴も叫ぶ。
「今行ったら失格だって!!」
出久も必死。
「かっちゃん落ち着いて!」
爆豪は歯を食いしばる。
「……潰す」
轟も静かに一言。
「競技で勝つ」
二人の目は完全にロックされていた。
そして次の瞬間。
やっと1年生にタスキが回ってくる。
「ごめん爆豪、轟!遅れちまった!」
その声と同時に――
「心配すンな任せろ!」
「ああ、問題ねぇ」
二人はほぼ同時に地面を蹴った。
「勝つ」
「勝つ」
ほぼ同じ言葉。
爆速。
観客がざわつくほどのスピードで、コーナーを回って行く。
切島が呆然とする。
「いや速すぎだろ!!」
上鳴も叫ぶ。
「今までで一番やる気出てるだろこれ!!」
その理由は明白だった。
打倒・天喰環。
それ以外に説明がつかない速度。