第15章 体育祭
体育祭当日。
会場は朝から熱気で満ちていた。
観客席、実況席、出場生徒――全員がどこか浮ついた空気の中にいる。
だがその中で、明らかに“温度が違う2人”がいた。
1年生陣営。
爆豪は、腕を組んだまま前を睨んでいる。
「優勝?当然だ」
その声には一切の迷いがない。
隣の轟も静かに頷く。
「負けるつもりはねぇ」
目的はただ一つ。
打倒・天喰環。
そして――その先にいる存在。
ユカリと関わる“全部”。
爆豪は舌打ちする。
「ダンスも二人三脚も全部って、あいつふざけてんのか」
轟は淡々と言う。
「ああ、距離が近すぎる」
「いやこれ体育祭!競技だから!」
テントの中から切島がツッコむが、空気はもう変わらない。
すでに“競技前の戦場”になっている。
***
一方その頃、3年生陣営。
その空気を真正面から受けてしまっている男が一人。
天喰環。
グラウンドの遠くから、爆豪と轟の視線が刺さってくる。
「………」
無言。
もう何も言わない。
隣でミリオが爆笑している。
「巻き込まれてるね〜環!」
ねじれも楽しそうにくるくる回る。
「天喰くん、注目されてるね〜!」
「注目ってレベルじゃない……」
環の声は低い。
爆豪の目。
轟の目。
どちらも“勝負前提の目”だ。
(これ、体育祭だよな……?)
環は一度、空を見上げる。
そしてぽつり。
「……帰りたい」
ユカリが笑う。
「だめだめ。目指せ二人三脚1位なんだから!」
環はもう何も言わない。
ただ深く息を吐く。
その頃、爆豪は拳を握りしめていた。
轟は静かに呼吸を整えていた。
同じ言葉が、心の中で重なる。
(負けない)
それは競技への意志であり――
同時に、別の感情でもあった。
体育祭の開始ベルが鳴る。
誰もまだ知らない。
この競技の本当の“勝負”は、記録でも順位でもないということを。