第12章 夏休み
そこに映っていたのは。
夏の海。
笑っているユカリ。
風に髪が揺れていて、楽しそうで。
そして何より――
「…………」
二人とも、言葉が出ない。
爆豪はスマホを握りしめたまま、低く言う。
「……殺すぞこれ撮ったやつ」
轟は静かに画面を見続けている。
「……無理だろ」
何が無理かは言わない。
だが、無理だった。
その瞬間。
後ろから声。
「なになに!?ユカリ先輩の写真きた!?」
上鳴が覗き込もうとする。
さらに。
「おい、それ絶対ユカリ先輩の水着だろ!見せやがれ!」
峰田がジャンプしかける。
その瞬間。
爆豪がスマホを即座に裏返す。
「見るな」
一言。
圧。
上鳴が引く。
「え、なんで!?共有しよーぜ!」
「するかボケ」
即拒否。
轟も静かにスマホをポケットにしまう。
「見せない」
「は!?なんでだよ!!」
峰田が叫ぶ。
爆豪は睨む。
「お前に見せる理由がねぇ」
轟も短く言う。
「これはダメだ」
「いや何がだよ!!」
上鳴が食い下がる。
「どんな写真!?気になるんだけど!!」
爆豪は一拍置いて、低く言う。
「……うるせぇ」
轟も同時に。
「……見せない」
その一言で終了だった。
教室は大騒ぎになる。
「絶対なんかあるだろ!!」
「逆に見せないの怪しいんだけど!!」
だが二人は動かない。
スマホはそれぞれポケットの奥。
まるで“聖域”みたいに守られている。
理由は単純だった。
あの写真は――
他人に見せるには、近すぎる。
そういう種類のものだったから。
そして二人は同時に思う。
(……ずりィ)
(……ずるい)
遠くにいるはずのユカリが、一番近くにいる気がして。
その日、爆豪と轟はしばらくスマホを無言で見続けていた。