第45章 誕生日
『 いつも僕たちのことを気にかけてくれてありがとうございます。先輩に教えてもらったこと、これからも大切にします。 緑谷出久 』
「……出久くん」
「はい」
「ありがとう」
「そんな……こちらこそです!」
ユカリは、もう一度色紙へ視線を落とした。
訓練のこと。
勉強のこと。
何気ない会話。
一緒に笑った時間。
特別な出来事ばかりではない。
けれど、その一つひとつが、ちゃんとここに残っている。
気づけば、色紙の余白はほとんど残っていなかった。
「……みんな、本当にありがとう」
ユカリは色紙を胸元へ抱き寄せる。
「こんなにたくさん書いてくれて……すごく嬉しい」
「喜んでもらえてよかったです」
出久が、ほっとしたように笑う。
その笑顔に、ユカリも微笑み返した。
「大事にするね」
その言葉に、周囲から自然と笑顔が広がった。
「ユカリ」
ふと、環の声がした。
振り向くと、環が小さな包みを差し出している。
「これ」
「……?」
「俺たち三人から」
「……三人から?」
ユカリが顔を上げる。
環は少しだけ照れたように笑った。
「うん」
そして、静かに続ける。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
「……環」
思いがけない言葉に、ユカリの目がわずかに見開かれた。
その隣から、ミリオがひょいっと肩を寄せてくる。
「俺の友達でいてくれて、ありがとう!」
いつもの明るい笑顔。
けれど、その言葉だけは真っ直ぐだった。
「……うん」
ユカリが恥ずかしそうに笑う。
すると、ねじれも三人の輪に加わるように身を寄せた。
「私も!いつも本当にありがとう!」
にっこり笑って、ユカリの顔を覗き込む。
「これからも一緒にいてね!」
三人を見つめるユカリの目が、少しだけ潤んだ。