第45章 誕生日
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同じ頃。
人気のない廃ビルの一室。
部屋の中には、ショッピングモールの防犯カメラ映像が映し出されたモニターが並んでいた。
そこに映るのは、去っていくユカリと環の背中。
部屋の中は静かだった。
最初に口を開いたのはトガヒミコだった。
「見つけてくれたね」
少し嬉しそうに笑う。
モニターには、ユカリが紙を拾う瞬間が映っていた。
「ユカリちゃん、ちゃんと読んでくれた」
トガは満足そうだった。
コンプレスも帽子を軽く押さえる。
「捨てずに持っていったのは意外だねぇ」
「そうか?」
トゥワイスが腕を組む。
「いや意外だろ!」
一人で会話するように言葉を重ねる。
「律儀なんだよ!」
「優しいんだ!」
荼毘は壁にもたれたまま、鼻で笑った。
「変わった女だな」
死柄木は何も言わない。
ただ、モニターを見ている。
ユカリが紙をポケットにしまった瞬間も。
その場を離れていく背中も。
全部、黙って見ていた。
やがて、小さく呟く。
「捨てなかったな」
誰に言うでもなく。
独り言のように。
トガが目を細めて笑う。
「だって、ユカリちゃんだもん」
死柄木は答えなかった。
モニターの中で、小さくなっていく背中を見つめ続ける。
ユカリは戻った。
ヒーローの場所へ。
仲間の場所へ。
それは分かっている。
理解もしている。
でも。
それでも。
あの数日間は確かに存在した。
ヴィラン連合の中で過ごした時間。
交わした言葉。
向けられた視線。
全部。
消えたわけじゃない。
死柄木はゆっくり目を閉じる。
そして。
小さく息を吐いた。
「……誕生日くらいは」
誰にも聞こえないくらいの声。
「祝ってやってもいいだろ」
部屋の誰も何も言わなかった。
ただ、モニターの向こうでは。
何も知らないユカリが環と並んで歩いていた。