第45章 誕生日
誕生日。
今日が、自分の誕生日だから。
たったそれだけの言葉。
なのに。
胸の奥に、いくつもの顔が浮かんだ。
死柄木。
トガヒミコ。
トゥワイス。
コンプレス。
荼毘。
あの場所で過ごした、数日間。
「…………」
ユカリは紙を見つめたまま、何も言えなかった。
きっと、この言葉は――偶然じゃない。
「ユカリ!」
突然、聞き慣れた声が階段に響いた。
「………!」
ユカリは反射的に紙を折り畳む。
そして、急いでポケットへしまった。
振り返ると、環が階段を降りてくるところだった。
「……大丈夫?」
心配そうな声。
ユカリは一瞬だけ環を見つめる。
それから、いつものように微笑んだ。
「うん。何か変な感じしたから見に来たんだけど、何もなかった」
そう言って、少しだけ笑う。
環はユカリの顔をじっと見つめる。
けれど、それ以上は何も聞かなかった。
「……ならいいけど」
「……うん」
二人はそのまま、非常階段を上っていく。
扉を開けると、再びショッピングモールの喧騒が二人を包み込んだ。
まるで、何もなかったかのように。
けれど――
その様子を、見ている者たちがいた。