第11章 合宿
朝食が終わると、合宿所の空気は一気に「自由時間モード」に切り替わった。
「午前は川行くぞー!」
誰かの一声で、A組B組が一斉に盛り上がる。
「涼しそう!」
「絶対楽しいやつじゃん!」
目的地は近くの清流。
訓練用とは別の、浅くて安全な川辺だった。
***
川に着くと、生徒たちは一気に散る。
水をかけ合う者、足だけ入れて涼む者、石を投げて遊ぶ者。
完全に“合宿最終日”の空気だった。
そんな中。
「ユカリ」
呼び捨ての声。
環だ。
「……大丈夫?」
「え?」
ユカリが瞬く。
環は視線を川に逸らしながら続ける。
「ユカリ、今日いつもと少し違うから」
ユカリは一瞬固まる。
(鋭い……)
そこへ――
「お〜い!ユカリと環〜!」
水しぶき。
バシャッ!
「わっ!?」
ミリオがかけた水が、ユカリと環にかかる。
「こっちで水かけ合戦やろうよ〜!」
「二人とも早くおいで〜!」
ねじれも笑顔で手を振っている。
一瞬で騒がしくなる。
その混乱の中で、ユカリは少し笑ってしまう。
「……ありがとう環。私なら大丈夫だよ」
そう言うと、環は少しだけ眉を緩めた。
「……ならいい」
短い。
でもそれ以上は聞かない。
環の不器用な優しさ。
そのやりとりを遠くから見ていたミリオは、にこにこしている。
「よし、じゃあ私も参戦してくるね。環はどうする?」
「俺はいい……」
「行ってくる」
水は思ったより冷たくて、足首まで浸かるだけでも気持ちいい。
周りの生徒たちは思い思いに遊んでいた。
「おい切島、そっち水かけんな!」
「上鳴うるせぇ!」
笑い声が川辺に響く。
その中で――
ユカリは少しだけ、川の石に足を取られた。
「わっ……」
ほんの一瞬のふらつき。