第11章 合宿
合宿3日目。
模擬訓練。
難易度が高い山岳コースだ。
常に足場は不安定で、木々の間を縫うように動かないといけない。
ペアになったユカリと轟は順調に進んでいた。
「先輩、右に罠あります」
轟の声はいつも通り落ち着いていた。
「うん、ありがとう」
ユカリはその指示に従って一歩下がる。
次の瞬間。
地面が崩れた。
「っ!?」
有加梨の足場が消える。
落下。
「先輩!」
――その瞬間、轟が即座に氷を出した。
滑り台のように氷を形成し、ユカリの落下を受け止める。
「大丈夫ですか」
「う、うん……ありがとう」
だが。
問題はそこからだった。
体勢が崩れたユカリを支える形で、轟がすぐ目の前にいる。
近い。
近すぎる。
呼吸の距離。
目を合わせた瞬間、どちらも動けなくなる。
「……先輩」
轟の声が少しだけ揺れる。
いつもの冷静さが、薄い膜みたいに崩れていく。
「昨日の夜のことですけど」
昨日の夜。
ユカリはすぐに察した。
「すごく嫉妬しました」
「……うん」
返事をするユカリの声も、少し小さい。
それでも。
お互いの距離が、さらに詰まっていく。