第11章 合宿
爆豪の目は、いつもの荒さじゃない。
ずっと抑えてたものが、少しだけ漏れてる。
「俺の時だけ、ああいう顔しろ」
「……どんな顔?」
「分かってんだろ」
短く言ってから、爆豪は小さく舌打ちした。
「クソ……」
それでも止まらない。
「好きだ」
一言。
まっすぐすぎて、逃げ場がない。
ユカリが息をのむ。
距離がさらに近くなる。
呼吸が混ざるくらい。
ユカリの頭が真っ白になる。
「っ……」
もう声にならなくなったその瞬間。
廊下の奥から足音がした。
「……ユカリ先輩?」
もう一つの声。
轟だった。
爆豪の動きが止まる。
舌打ち。
「チッ……タイミング最悪かよ」
轟は二人の距離を見て、状況を理解するのに数秒かかった。
そして静かに近づく。
「……何してるんですか」
いつもより少しだけ低い声。
空気が一気に張り詰める。
ユカリは慌てて爆豪から離れて両手を振った。
「ち、違うの!喉乾いてただけで……!」
爆豪は何も言わない。
轟は一瞬黙る。
そして。
「……俺も先輩と話したいです」
短く、それだけ言った。
三人の間に、妙な沈黙が落ちる。
ユカリは思った。
(これ、完全に詰んでる……)
けれどその空気の中で。
誰も一歩も引かなかった。
ただ一つだけ共通していたのは。
二人とも、同じ人を見ていたということだった。