第11章 合宿
「すごい……!」
出久が目を輝かせる。
「ユカリ先輩、物間くんの個性の使い方すぐ理解してる!」
しかも。
ユカリの指示が的確。
物間もかなり動きやすそうだった。
「そこ!」
「っ!」
切島が動いた瞬間。
物間がタイミングよく拘束。
そこへユカリが追撃する。
「今!」
判定ランプ点灯。
『勝者、ユカリ・物間チーム!』
「おぉぉぉぉ!!」
歓声と拍手がわき起こる。
B組大盛り上がり。
「物間やるじゃん!」
「すげぇ!」
物間本人も驚いていた。
「勝った……」
ユカリが笑顔でハイタッチを求める。
「物間くんすごかった!」
「っ」
物間、一瞬固まる。
そして。
「ふ、ふふん!当然さ!」
パァン!
良い音。
めちゃくちゃ嬉しそうな顔で手を合わせた。
それを。
少し離れた場所から見ている二人。
爆豪と轟だ。
空気が重い。
「……近ぇ」
爆豪が低く呟く。
轟もじっと見つめていた。
「ユカリ先輩、楽しそうだな」
「チッ」
完全に嫉妬である。
その横で上鳴がニヤニヤしていた。
「お前ら分かりやすすぎんだろ」
「うるせェ!」
そして、模擬戦はその後も順調に続き。
合宿2日目の訓練は終了した。
***
深夜。
合宿所は完全に静まり返っていた。
廊下の非常灯だけが、薄くオレンジ色に光っている。
眠れなかったユカリは、水を飲もうと部屋を出た。
「……涼しい」
小さく息を吐いた、その時だった。
角を曲がった先。
誰かとぶつかりそうになる。
「っ、わり」
低い声。
爆豪だった。
「爆豪くん……?」
お互い、固まる。
こんな時間に、二人きり。
静かすぎて、逆に心臓の音がうるさい。
「……先輩も起きてんのか」
「うん、ちょっと喉乾いてて」
短いやりとり。
でも空気はいつもと違った。
爆豪はしばらく黙っていたあと、視線を逸らさずに言う。
「……今日ずっと思ってた」
「え?」
一歩。
また一歩。
ゆっくりとユカリに近づく。
そしてユカリの背中の壁に。
トンッ
軽く手をつく。
「先輩」
低い声。
「他の奴と笑ってんの、ムカつく」
「っ」
ユカリの心臓が跳ねる。