第8章 学園祭・前日談
ユカリは頭を抱えた。
「いやいやいや!!私出ないからね!?」
すると二人同時に止まる。
「なんで」
「どうしてですか」
圧。
「え、だって恥ずかしいし……」
「何が」
「全部!!」
あんなステージで“お似合い”とか評価されるなんて無理だ。
絶対心臓が持たない。
だが。
「先輩と並ぶだけでいいなら余裕です」
轟、真顔。
「むしろ見せつけてェ」
爆豪も真顔。
「だからそういうことサラッと言わないで!?」
ユカリの悲鳴に、教室が笑いに包まれる。
するとミリオが面白そうに頬杖をついた。
「でも実際、どっちと出ても優勝候補じゃない?」
「分かる〜!」
ねじれも大盛り上がり。
「爆豪くんとは“強気美形カップル”感あるし!」
「轟くんとは“王道美男美女”感ある!」
「やめてぇぇ……」
ユカリは机に突っ伏した。
恥ずかしすぎる。
だが横では。
爆豪と轟が、妙に真剣な顔でポスターを見ていた。
「……観客投票か」
「ユカリ先輩となら勝てる気がする」
「負けねェよ」
「ああ、俺もだ」
完全にやる気だった。
しかも問題なのは。
二人とも、“ユカリと出る前提”で話していること。
「いやだから私出ないって!」
ユカリが顔を上げた瞬間。
爆豪がじっと見てきた。
「……先輩」
「な、なに」
「そんなに俺と出るの嫌かよ?」
「っ」
直球。
しかも少しだけ不安そうな顔。
そんな顔されたら弱い。
言葉に詰まったユカリへ、轟も静かに言う。
「俺はユカリ先輩と出たいです」
真っ直ぐな目。
その視線が熱くて、鼓動が速くなる。
二人とも、本気だ。
ユカリは視線を逸らしながら、小さく呟いた。
「……考えとく」
その瞬間。
爆豪と轟の空気が変わる。
「!」
「……本当ですか」
明らかに嬉しそう。
その顔を見た瞬間。
ユカリの心臓がまたうるさくなった。
(もうほんと無理……!!)
最近ずっと、二人に振り回されっぱなしだった。