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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第24章 演劇祭 after story




しばらくして、轟が静かに呟いた。

「……祭壇のシーン」

ユカリの心臓が少し跳ねる。

「怒ってますか」

思わずユカリは目を丸くした。

「え?」

「台本と違ったから」

轟は前を向いたまま言う。

「相談もしなかったし、勝手だった」

ユカリは少し考えた後、ゆっくりと首を横に振った。

「怒ってない」

轟が少しだけこちらを見る。

ユカリはいつものように笑った。

「びっくりはしたけど」

それは本当だ。

本当に心臓が止まるかと思った。

でも怒ってはいない。

すると轟は小さく息を吐いた。

その顔は少しだけ安心したように見えた。

静かな夜道。

遠くで虫の鳴く音。

そして。

轟がぽつりと言う。

「ミッドナイト先生に言われたんです」

「?」

「ロミオは本気でジュリエットを愛してるのかって」

轟は続けた。

「本人が幸せならそれでいいって思ってるなら、それはロミオじゃないって」

歩きながら。

静かに。

「俺」

少し笑った。

「たぶん図星だったんだと思います」

ユカリは黙って聞いている。

「先輩が誰を選んでも」

「それが先輩の幸せならいいって思ってた」

夜風が吹く。

「今もそう思ってます」

ユカリの胸が少し苦しくなる。

轟は優しい。

ずっと。

変わらないくらい。

優しいのだ。

「でも」

轟は足を止めた。

ユカリも止まる。

街灯の下で向かい合う。

轟の目は真っ直ぐだった。

演技の時と同じ。

ロミオだった時と同じ。 

「今日だけは」

静かな声。


「ロミオでいたかった」


ユカリは息を呑む。

「だから」

少しだけ笑う。

「後悔はしてません」

それを聞いたユカリは少しだけ目を伏せた。

そして困ったように笑った。

「……ずるいなぁ」

「?」

「そういうこと真っ直ぐ言うの」

轟は意味が分からない顔をする。

それがまた轟らしくて。

ユカリは思わず笑ってしまった。

夜道に小さな笑い声が響く。

そして二人はまた歩き出す。

寮の明かりはもうすぐそこだった。


演劇祭は終わった。

ロミオとジュリエットも幕を閉じた。

けれど。

轟焦凍の想いだけは。

まだ終わっていなかった。

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