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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第23章 演劇祭




観客席がざわつく。

「あれ?」

「え?」

「待って」

誰かが小さく声を漏らす。

ユカリも驚いていた。

台本にない。

稽古でもやっていない。

だけど。

轟の目は揺れていなかった。

ロミオがジュリエットを見つめる。

愛する人を見る目だった。

失いたくない人を見る目だった。

そして。

ゆっくりと。

本当にゆっくりと。

距離が縮まる。

客席。

息を呑む音。

誰も動かない。

誰も喋らない。


そして――


唇が重なった。


一瞬。

本当に一瞬だけ。

長くはない。

けれど確かな口づけ。

礼拝堂が静まり返る。

舞台袖。

出久が固まる。

環が固まる。

ねじれが口を押さえる。

ミリオは目を見開いている。

そして観客席最前列。

1年A組。

全員停止。

「…………」

「…………」

「…………」

上鳴が口をぱくぱくさせる。

声が出ない。

芦戸は顔を真っ赤にしている。

麗日は完全に硬直。

八百万はパンフレットを落とした。

切島は理解が追いつかない。

そして爆豪。

完全に無言。

怖いほど無言だった。

舞台上。

口づけを終えたロミオが額を寄せる。

そして静かに言う。


「誰にも渡さない」


それは台本にはない台詞だった。

アドリブ。

けれど不思議なほど自然だった。

ジュリエットは驚いた顔のまま。

それでも。

役として返す。

「ロミオ……」

観客席の誰かが泣きそうな声で呟く。

「終わりわかってるのに幸せそう……」

だからこそ苦しい。

だからこそ美しい。

ロミオとジュリエット。

この物語で二人が最も幸せだった瞬間。

その一場面が。

雄英高校演劇祭の歴史に残るほど鮮烈に、観客たちの記憶へ刻み込まれた。


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