第23章 演劇祭
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雄英高校演劇祭当日。
朝から校内は異様な熱気に包まれていた。
普段は訓練や授業の話題で賑わう雄英も、今日ばかりは違う。
「もう入場始まってるって!」
「急げ急げ!」
「今年ロミジュリだろ!?」
生徒たちが続々と講堂へ向かう。
観覧席には在校生だけでなく、教師陣やプロヒーローたちの姿もあった。
客席後方では大柄な男が手を振っている。
「環ぃぃぃぃ!!頑張れよぉぉぉ!!」
ファットガムである。
その声がステージ袖まで届いた。
「……ファットが来てる」
顔を出して客席を確認した環が固まる。
「無理だ……」
本気で帰りたそうな顔の環。
出久が慌てて肩を掴む。
「大丈夫です!天喰先輩ならいけます!みんなじゃがいもだと思いましょう!!」
「じゃがいも……」
環はもう一度客席を見る。
何百人もの観客。
じゃがいも。
じゃがいも。
じゃが――
「無理だ」
「諦めないでください!!」
出久は必死。
その横でミリオは笑いを堪えている。
「環、頑張れ!」
「……ミリオは他人事だから」
「それはそうだね!」
その頃。
別の袖ではユカリが衣装を整えていた。
純白のドレス。
ジュリエット。
鏡の前で深呼吸する。
もちろん緊張している。
だけど、不思議と逃げ出したい気持ちはなかった。
ここまでみんなで作ってきた。
だから最後までやり切りたい。
そう思えた。
「ユカリ先輩」
低い声。
振り返ると、ロミオの衣装姿の轟がいた。
いつもの制服とは全く違う。
ユカリは思わず少し見上げる。
「轟くん」
「緊張してますか?」
「うん。少しだけ」
正直に答えると、轟も頷いた。
「俺もです」
轟がそう言うのは珍しい。
ユカリは少しだけ笑った。
「なんか安心した」
「そうですか」
「うん」
二人の間に流れる静かな空気。
だけど。
祭壇のシーンのことは結局聞けなかった。
轟も何も言わない。
そのまま開演の時間が近づく。