第23章 演劇祭
ユカリは少しだけ胸がざわついた。
何だろう。
理由は分からない。
だけど、いつもの轟と少し違う。
そんな気がした。
すると。
ミッドナイトが笑った。
まるで予想していたみたいに。
「ユカリはどう?それでいい?」
急に振られたユカリは慌てる。
「あ、はい……大丈夫です」
そう答える。
本当は気になる。すごく気になる。
でも聞けなかった。
轟は小さく頷いた。
「ありがとう」
それだけ言う。
ミッドナイトは手を叩いた。
「じゃあ今日はここまで!」
「最終確認終了!」
その言葉と同時に、講義室の緊張が一気に解けた。
「終わったぁ!」
「明日かー!」
「あー緊張する!」
あちこちで声が上がる。
出久は最後まで台本を見直している。
環は静かに荷物をまとめていた。
ねじれとミリオはもう観客目線で盛り上がっている。
「絶対泣いちゃうよ〜!」
「俺も俺も!」
賑やかな空気。
その中で、有加梨は荷物をまとめながらふと顔を上げた。
轟は少し離れた場所にいた。
窓際。
夕日が差し込んでいる。
誰とも話していない。
ただ。
一人で舞台を見ていた。
まるで。
何かを考えるように。
何かを決めるように。
その横顔は静かだった。
ユカリは思う。
――明日になれば分かるのかな。
轟くんが止まった理由。
祭壇のシーンを残した理由。
そんな予感だけが残る。
そして。
夕焼けに染まる講義室を最後に。
キャストたちはそれぞれ帰路についた。
いよいよ明日。
雄英高校演劇祭。
『ロミオとジュリエット』
開演の日がやってくる。