第23章 演劇祭
稽古3日目。
特別講義室は、これまでよりもさらに本番に近い空気になっていた。
今日は――演技合わせ。
台本を読むだけではなく、実際に立ち位置や動きをつけながら芝居を作っていく日だ。
教室前方ではミッドナイトが腕を組み、満足そうに頷いている。
「ようやく演劇らしくなってきたわね♡」
ユカリたちキャスト陣はそれぞれ位置につく。
出久も親友役として参加している。
今日は見学ではなく完全に役者側だ。
「緑谷くん」
「はい!」
「ロミオの親友は場を盛り上げる役よ!」
「はい!」
「ロミオが恋したら全力で応援!」
「はい!」
「失恋したら一緒に怒る!」
「はい!」
「結婚したら祝福!」
「はい!」
出久の返事だけ異様に良い。
そして。
今日のメインは再び舞踏会のシーン。
ロミオとジュリエットが出会う場面だ。
「位置について!」
ミッドナイトが声を上げる。
轟が歩く。ユカリも歩く。
出会う。
立ち止まる。
向き合う。
昨日まで何度もやったはずなのに。
実際に芝居として動くとまた違う。
「スタート!」
轟が台詞を言う。
「美しい人だ」
昨日までより自然だった。
感情も入っている。
「その言葉は私にはもったいないものです」
二人の間に流れる空気。
出会ったばかりなのに目を離せない。
そんな感覚。
教室が静かになる。
出久も思わず見入っていた。
そして。
「ストップ!」
ミッドナイトが止める。
「良い!」
嬉しそうだ。
「でもまだ足りない!」
やっぱり来た。
「轟くん!」
「はい」
「もっと目で追いなさい!好きな子を見る時よ!」
ミッドナイトの指導にも熱が入る。
轟は数秒考えて返事をした。
「わかりました」