第23章 演劇祭
そして再開。
今度はユカリの番。
ジュリエットの台詞。
「巡礼者様、その言葉は私にはもったいないものです」
優しい。自然だ。
しかしミッドナイトは首を振る。
「もっと!もっと何かない?」
「何か?」
ユカリが困る。
すると。
ミッドナイトがにやりと笑った。
「昨日を思い出して♡」
ユカリが固まる。
しかしミッドナイトは止まらない。
「好きな人を見た時!」
「胸がちょっと苦しくなる感じ!」
「目で追っちゃう感じ!」
「その感情よ!」
教室が静かになる。
ユカリは少しだけ視線を落とした。
昨日、轟の告白をもう一度聞いた時のことを思い出す。
真っ直ぐな目。
迷いのない声。
そして。
少しだけ速くなった鼓動。
顔を上げて轟を見る。
自然と轟も見返す。
ふいに交わる視線。
数秒。
「……あ」
ミッドナイトが小さく呟く。
今のだ。
ユカリ自身も分かった。
ジュリエットはきっと。
こんな風にロミオを見た。
そして、台詞を言う。
今度は少しだけ、柔らかく。
少しだけ照れたように。
「……巡礼者様、その言葉は私にはもったいないものです」
教室が静まる。
ミッドナイトが胸を押さえた。
「いい……」
感動している。
「いいわよ……!」
出久も感心している。
「すごい……」
轟も少し驚いていた。
ユカリの雰囲気が変わったからだ。
――こうして、稽古2日目も順調に進んでいった。