第23章 演劇祭
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『恋を知りなさい!』
というミッドナイトの熱い言葉のあと。
キャスト陣はそれぞれ感情作りに入っていた。
だが――
ユカリは少し違った。
恋愛感情を演じろと言われて、真っ先に浮かんだ顔があったからだ。
轟焦凍。
合宿の時。
体育祭の時。
そして、あの日。
『ユカリ先輩』
低く落ち着いた声。
まっすぐな視線。迷いのない瞳。
『好きです』
その言葉。
胸が跳ねた感覚。
誤魔化せなかった鼓動。
あれは演技じゃなかった。
轟自身の気持ちだった。
だからこそ――
ユカリはふと顔を上げる。
目の前には台本を読んでいた轟。
「……轟くん」
「はい?」
轟が顔を上げる。
ユカリは少し考えてから言った。
「もう一回やってくれない?」
「何をですか?」
純粋に分かっていない顔。
ユカリは少しだけ照れる。
けれど、逃げなかった。
「その……あの時の告白」
その瞬間。
教室の空気が止まる。
全員が固まる中、ミッドナイトの目が輝く。
轟は数秒考える。
そして理解した。
「演技の参考ですか?」
「うん、感情を思い出したくて」
轟は静かに立ち上がる。
周囲がざわつく。
ミッドナイトなんてもう席に座っていない。
最前列まで来ている。
完全に観客。
「わかりました」
轟はユカリを見る。
今度は真剣だった。
演技ではなく、あの日を思い出すように。
少しだけ息を吐く。