第23章 演劇祭
「授業?」
轟が首を傾げる。
「そう!」
ミッドナイトは指を立てた。
「恋愛演技の基礎よ!」
静寂。
ユカリは嫌な予感しかしない。
しかしミッドナイトは止まらない。
「まず理解してほしいの!ロミオとジュリエットはね!好きになった理由なんて説明できないのよ!」
熱い。やたら熱い。
「顔?性格?そんなの後付け!」
ミッドナイトは教室を歩き回る。
「見た瞬間に心を奪われる!それが恋!」
轟が真面目に聞いている。
出久もメモを取る。
環だけが遠い目をしていた。
「だから!」
ミッドナイトが轟とユカリを指差した。
「ロミオ!」
「はい」
「ジュリエット!」
「はい」
「今から見つめ合いなさい♡」
沈黙。
空気が凍る。
「…………」
だが、これは稽古なのだ。
やれと言われたらやるしかない。
「はい始め!」
ユカリは少し照れながら轟を見る。
轟もユカリを見返す。
数秒の沈黙。
だが、ミッドナイトが叫ぶ。
「違う!」
全員びくっとする。
「それは友達を見る目よ!恋じゃない!恋人を見なさい!」
「恋人?」
轟が本気で分からない顔をする。
「難しいね……」
ユカリも困る。
目で恋を表現するのは容易じゃない。
ミッドナイトは額を押さえた。
「重症ね……」
そしてミッドナイトは新たな標的を見つけた。
「緑谷くん!」
「は、はい!?」
「あなたは親友役!」
「ロミオの恋を全力で応援するの!」
「えっ」
出久が固まる。
ミッドナイトは笑顔で追撃する。
「つまり!ロミオがジュリエットを見て幸せそうなら誰よりも喜ぶ!」
「はい!」
「ロミオが失恋したら誰よりも怒る!」
「はい!」
「ロミオが結婚するなら全力で祝福!」
「はい!」
元気よく返事した。
その瞬間。
ミッドナイトは満足そうに頷く。
「いいわ!今日はまず感情を作るところから始めましょう!恋を知りなさい!」
こうして。
雄英高校ロミオとジュリエット稽古初日。
最初の壁は――
剣術でも。
台詞でも。
演技でもなく。
恋人らしく見つめ合うことだった。