第23章 演劇祭
『――やあやあ、雄英高校のみんな。お昼休みを楽しんでいるかな?』
落ち着いた、どこか柔らかい声。
根津校長だ。
途端にあちこちの教室から小さな笑い声が漏れる。
『さてさて。今年もやってきましたねぇ。毎年恒例、雄英高校演劇祭の季節です』
楽しそうな口調に、生徒たちも自然と身を乗り出す。
『今年も教師陣と生徒会でたくさん話し合いました。王道にするか、冒険するか。現代劇にするか、歴史物にするか』
わざとらしく間を空ける。
『実に悩みましたよ』
「早く言ってくれ……」
どこかの教室からそんな呟きが聞こえた。
根津はそれすら予想していたかのように笑う。
『ふふふ。焦らない焦らない』
さらに数秒。
校内中の生徒が耳を澄ませる。
ヒーロー科の生徒も。
サポート科の生徒も。
職員室の教師たちでさえ少しだけ手を止めていた。
『では発表しましょう』
空気が張り詰める。
『今年の演劇祭の題材は――』
誰もが息を呑んだ。
『世界的名作。シェイクスピア作』
一瞬の沈黙。
そして。
『――ロミオとジュリエットです!』
その瞬間。
校内中が爆発した。
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
「マジか!?」
「王道じゃん!」
「やば、ガチ恋愛系!」
悲鳴にも似た声が次々と上がる。
1年A組も大混乱だった。
「ロミオとジュリエット!?」
「うわぁぁぁ!」
「やべぇ!」
「誰がやるんだよ!?」
切島や上鳴のテンションが上がる。
麗日と芦戸は顔を見合わせて大盛り上がりだ。
一方で轟は瞬きを繰り返していた。
「……ロミオとジュリエット」
その単語だけを静かに呟く。